topimage

大人の木育講座 第3回 報告 -  2023.03.13 Mon

3月2日(木)、札幌エルプラザ中研修室にて西川栄明さんの企画による「第3回大人の木育講座」を開催しました。

20230301.jpg

講師の斎藤直人さん(北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹)は、現在、ミズナラをはじめとする道産材を用いたウイスキー樽の研究に携わっておられます。
講演のテーマは、「なぜ、ウイスキー樽の素材にミズナラが使われるのか~林産試験場の研究者が、ウイスキー樽の不思議をわかりやすく解説~」です。
今回の参加者は、木工や木材関係を中心に幅広い分野より定員50名近くにお集まりいただきました。木材の専門知識にたいする関心の高さでしょうか、連続参加のかたも多いようでした。

20230302.jpg

ミズナラ材の樽で熟成されたウイスキーは、繊細で複雑な香りや味わいを醸し出すといわれています。
斎藤さんのお話しは「木材の研究者が解説するウイスキー樽の不思議」と題して、北海道の森林資源にはじまり、次に木材の性状についての基礎的知識からウイスキー樽の機能へとすすみます。

20230303.jpg
斎藤さんのスライド資料より

20230304.jpg

同じナラ材の樽でも、アメリカのバーボン・ウイスキーに使われるホワイトオークと、イギリスのミズナラでは、道管の大きさと成分が違うので熟成する際の条件が変わることなど。木材の成分や性質などを研究してきた化学者の視点から、樽の内部で起こっているウイスキーの熟成(機能・作用)について説明がありました。

20230305.jpg
20230306.jpg

次に各種の香り成分については、研究の成果品である18種類の香り成分を付箋紙に浸けて、各自に渡してくださいました。よく嗅いだことのあるトドマツやラベンダーにはじまり、木材由来の香り、煙由来の香り、発酵・貯蔵由来の香りと続き、ミズナラ、サクラ、カラマツなど新たな樽材の可能性まで・・・各自が調香師のように次々と体験しました。

最後には、ジャパニーズ・ウイスキーを国産ミズナラ樽で作ることの現状について。
・樽用ミズナラには樹齢150〜200年(末口40センチ以上)の原木が必要
・パルプ用材でも良いが、歩止まりは悪い(20%以下)
・ミズナラ樽の需要は高いものの、唯一の国内工場でも年間数十樽の制作
・大手メーカーは自社で樽加工できるが、地域の蒸溜所には技術職人が不在で補修困難
・樽作りには、施設と設備が必要
これらの点で、なかなか道は険しいと感じました。しかし北海道のミズナラ樽を使ったウイスキーは貯蔵30年を過ぎると、メロンやチョコレートのようなとても良い香り(酢酸フェネチルエチル)が出るそうです。
お酒は飲めませんでしたが、たくさんの香りに包まれた夢見心地の講座でした。

20230307.jpg

これで、連続3回の「大人の木育講座」が無事終了しました。厳寒期にもかかわらず、道内各地から皆さんご参加いただきありがとうございました。各講師の方々にも貴重な機会をつくっていただいたことに感謝しています。



木育の種、咲かせた花~第2回 木育どうでしょう -  2023.02.14 Tue

木育の取組の展開方法として「メディアやタレントの有効活用」がある。皆様も経験がないだろうか。企画そのものに興味がなかったとしても、好きなタレントが出ていたら見てしまう。その結果、面白ければ企画も印象に残る。

木育が生まれた当初、木と疎遠になりがちな子どもたちに、どうやって木に触れる機会を増やせるかを課題としていた。子どもが小さいうちから木や森に触れる原体験を増やすためには、その親となる世代に、木育が楽しそうなものだ、子どもと一緒に参加してみたいと思わせるアピールが必要だ。それには、これから結婚して子育てするだろう世代、20~30代に人気のあるタレントを活用し、メディアで木育を楽しく取り上げてもらうのが有効な手段ではないだろうか。

こんなことを、今から十数年前にお酒の入った夜の席で熱弁している若者を、他のメンバーは笑って聞いて、こう言った。「木育どうでしょうだね」
その後、酔いがさめても熱が冷めない一人のメンバーは、某テレビ局あてに分厚いファンレターを送ることとなる。木育という新しい取組を始めること。木育を広くかつ楽しく認知してもらうために、日常で使っている木製品が、森でどのように育って、切り出されて、加工されていくかを、テレビの企画としてタレントに体験してもらうことによって、視聴者に面白く届けられないか。例えば、タレントが料理をふるまいたいだけなのに、木を伐りだして箸や机、椅子、家を作らないと料理が作らせてもらえない、みたいな企画を。こんな手紙と木育のPR冊子を一方的に送り、送っただけで満足していたものと思う。
           
驚くべきことに、このファンレターに当時の番組プロデューサーから返事が来た。折しも、番組発信のお祭りが開催されようとしていた時期だった。プロデューサーは木球プールが映った冊子を目に留めてくれたようで、「番組のイベントに来てくれる人たちは、番組のことが好きで来てくれるからよいが、子ども連れで参加してくれた場合、子どもが退屈するのはかわいそうだ。託児スペースを作るので木球プールを置かせてもらえないか」という相談だった。当時、どうにか木球プールを貸し出せないかとがんばってみたが、民間企業のイベントにレンタルする体制が整えられず、泣く泣くお断りすることとなった。

今なら、木球プールをはじめ木製遊具をレンタルできる仕組みが選べるようになった。あの頃は実現できなかったけれど、時期と環境が整っていれば、イベントでの木球プール設置は実現できたかもしれないなと思う。

木製遊具をめぐる状況だけではなく、年月が経って、いろんなことが変わった。数十年前に話題にあげていた北海道ゆかりのタレントたちは北海道にとどまらず躍進を続け、今や誰かしら全国ネットに出ている活躍ぶりだ。
タレント事務所の社長改め会長は、北海道赤平市の森林所有者となり、自身の山でツリーハウスを作る企画がテレビ画面を通してお茶の間に届けられることとなった。2019年に開催された「国民参加の森林づくりシンポジウム」では、鈴井貴之氏が登壇し、森づくりをテーマにたっぷり語ってくれた。

20230201.jpeg

2021年に北海道で行われた第44回全国育樹祭では、森崎博之氏がナビゲーターとなり「これからも木育を進めていきましょう!」と叫んでいた。

20230202_20230214220728131.png

メディアの有効活用を訴えていた、北海道ゆかりタレントのファンの小さなアイデアの種は確かに花を咲かせたのだ。一通のファンレターが、もしかすると何かや誰かを動かして、年月を経て企画が実現するかもしれない。
今後も、木育がメディアを通して新しい誰かの目に留まり、次世代が木育に関わるきっかけになるよう期待をしていきたい。


◆水産林務部森林計画課 根井三貴

大人の木育講座 第3回 開催のお知らせ -  2023.01.31 Tue

◆大人の木育講座 第3回
テーマ:なぜ、ウイスキー樽の素材にミズナラが使われるのか。
~林産試験場の研究者が、ウイスキー樽の不思議をわかりやすく解説~

〇講師:斎藤直人(北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹)

〇開催日時:2023年3月2日(木)19:00~20:50

〇会場:札幌エルプラザ4階 中研修室
札幌市北区北8条西3丁目(JR札幌駅北口より徒歩3分)

講師の斎藤直人さんは、現在、ミズナラをはじめとする道産材を用いたウイスキー樽の研究に携わっておられます。ミズナラ材の樽で熟成されたウイスキーは、繊細で複雑な香りや味わいを醸し出すといわれています。今回の講座では、木材の成分や性質などを研究してきた化学者の視点から、ミズナラ樽の内部で起こっているウイスキーの熟成(機能・作用)について、研究成果をわかりやすくお話しくださいます。
実際に、樽によって生み出される香りは、どのようなものなのか。ミズナラ以外の道産材(カバやサクラなど)も含めて、会場で来場者の皆さんにも香りを感じていただきます。
「大人の木育講座」では、質疑応答時間をたっぷりとって、講師と来場の皆さまとの交流をはかります。どなたでもご参加いただけますので、どうぞお越しください。


2301rinjiミズナラ原木(厚岸)ウイスキー樽用 IMG_0645
ミズナラ原木(厚岸)ウイスキー樽用


〇参加費:500円(学生と木育ファミリー会員は、無料)

○定員:50名 *定員になり次第、申込を締め切ります。

〇申込:参加ご希望の方は、下記メールアドレスよりお申し込みください。
その際、題名を「3/2講座申込」と標記し、メール文に、1) 氏名 2) 所属(職業)の記入をお願いいたします。 *学生と木育ファミリー会員の方は、その旨を必ずご記入ください。
family@mokuiku.net(木育ファミリー事務局)

〇講師プロフィール:斎藤直人(さいとう なおと)
北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹。
1960年生まれ。企業や関係機関と連携しながら、森林資源を材料とした「ものづくり」と、その品質向上に必要となる「メカニズム解明」に携わる。その研究を基に、製品として実用化させた(トドマツ葉からの精油、流木の堆肥・緑化資材など)。現在、道産材を用いたウイスキー樽の実用化、道産材の建築材利用などの研究を進めている。
受賞歴:1993年、第7回日本木材学会奨励賞「リン酸化によるヒドロエステル化」、2020年、第22回日本木材学会技術賞「コアドライ」など多数。

〇主催:木育ファミリー

木育の種、咲かせた花~プロローグ -  2023.01.15 Sun

木育は、平成16年度に行われた、北海道と民間との協働プロジェクトの中で生まれた言葉だ。当時、食育という言葉が認定されてきたところで、林業振興と教育の観点から、木育という言葉とともに、新しい取組を始めようとしていた。プロジェクト会議の第1回目、初めましてのメンバーが一堂に会し、最初に事務局から説明されたのは、このような趣旨だったと記憶している。
「木育は新しい言葉です。木育が行政だけの取組にならないように、概念も取組も、ここにいる皆さんで、一から作り上げ、成長させていってください。木育という言葉に、皆さんで魂を込めてください。」

 このプロジェクトの議論から、今の木育につながる色々な意見が出た。
「木や森を身近に感じられなくなっている子どもたちに、もっと木に触れてもらいたい」
「でも、子ども向けの取組だけで終わらせず、大人も巻き込める全世代を対象とした取組にしていこう!」(子どもをはじめとするすべての人に)
「すでに各地で展開されている多様な活動を、木育の名前のもとに集ってもらい、膨らませていこう」(あれも木育、これも木育)
「受容から能動へ、個から人と人、社会とのつながりへ発展させていこう」(木とふれあい、木に学び、木と生きる)
こんなイメージが共有され、言葉や概念が培われていった。

mokuiku_no_tane.jpg

当時のメンバーは、木育という新しい種から、どんな花が咲いたらいいだろう、どんな実をつけてくれたら面白いだろうという感覚で、様々なアイデアをぶつけ合っていた。
その中には、夢物語として埋もれていったアイデアもたくさんあるけれど、木育が生まれてもうすぐ20年が経とうとする今、アイデアが時間を経て実現したものもある。
このエッセイでは、時間、きっかけ、人とのつながりによって、叶えられた夢、結実した思いをテーマにしていきたいと思う。そして、思いが形になる実体験が、これからの木育の取組への希望になることを願っている。

大人の木育講座 第2回 報告 -  2022.12.14 Wed

12月1日(月)、札幌エルプラザ環境研修室にて西川栄明さんの企画による「第2回大人の木育講座」を開催しました。

20221201.jpg

今回の講師は、大橋義徳さん(北海道立総合研究機構 林産試験場 技術部 研究主幹)です。
当日の参加者は学生から森林や木材・木工関係、建築、行政と幅広い分野の顔ぶれで、また前回に続いての方々も多く見られました。講演のテーマは、「トドマツ、カラマツ、スギ。材質は、どこがどう違うのか。 ~林産試験場の研究者が、わかりやすく徹底解説~」です。

20221202.jpg

大橋さんは林産試験場での実際の研究データをもとに、テーマを分けて多数の画像と詳しい説明でお話しをしてくださました。当日のスライド資料をご提供いただいたので、抜粋して報告します。

20221203.jpg


最初は、近年の「木造ブーム」と「木材の特性」について・・・


20221204.jpg

20221205.jpg

20221206.jpg


次に、「道内の木造建築」と「木造を支える木材」について


20221207.jpg

20221208.jpg


「北海道の人工林資源と利用状況」から「道産材の材質」カラマツ、トドマツ、スギの特性について


20221209.jpg

20221210.jpg

20221211.jpg

20221212.jpg

20221213.jpg


最後は「道産材の活用に向けた取り組み」として、実際に林産試験場での道産針葉樹材(トドマツ、カラマツなど)を用いた木質材料の製造技術・利用技術の開発など、特にCLTを主要テーマにした研究成果を見せてくださいました。


20221214.jpg

20221215.jpg

20221216.jpg


質疑応答タイムでは、木材関係や研究者、学生さんからの質問にも丁寧に答えていただき、専門的で充実した内容の講座となりました。


20221217.jpg


◆第3回大人の木育講座のお知らせ◆
2023年3月2日(木)19:00~20:50 札幌エルプラザ4階 中研修室
テーマ:なぜ、ウイスキー樽の素材にミズナラが使われるのか。
~林産試験場の研究者が、ウイスキー樽の不思議をわかりやすく解説~

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

最新記事

カテゴリー

NEWS (12)
木育ファミリーの活動 (20)
木育の種、咲かせた花 (2)
あれも木育、これも木育 (11)
木育リレーエッセイ (21)
連載 (36)
広報活動 (1)
会員数と賛助会員紹介 (1)
お問い合わせ (1)
未分類 (0)

リンク