木育の種、咲かせた花~第7回 木育建築のススメ - 2023.09.19 Tue
10年近く前に「木育建築のススメ」というタイトルでブログを書きました。その後、北海道ではこの木育建築が少しずつ増えているように思います。住宅だけではなく、公共建築や教育施設、商業施設などにおいて、木とのふれあいを大切に建てられる建築が多くなっています。こうした木育建築が増えることは、北海道という地域が自然環境に恵まれ、木や森と深く結びついた生活をしていることの証です。これまで森林環境を豊かに守り、木材産業を質高く育ててきた先人達の地道な努力の結果でもあります。
建築の構造材に木材を使っていることを一般的には「木造建築」と呼びますが、建築空間における木材の持つ良さや可能性を伝えるものではありません。この20年の間に、単なる木造建築ではなく木育建築と呼ぶのが相応しい建築が増えています。人の生活のなかで「木とふれあい、木に学び、木と生きる」ことを大切にした木育建築をしっかりと評価して、木育の理念を感じる建築をこれからも増やしていきましょう。
ではあらためて木育建築とはどのような建築なのか考えてみます。
一つ目はそこで使われている木材が周辺地域の森とつながっていること(地産地消)、二つ目はその中に地域の歴史や風土とのつながりが感じられること(地域風土)、三つ目はその建築技術に地域の産業とのつながりが見えること(地場産業)、四つ目は木のぬくもりがそこに集う人を優しく結びつける建築であること(木質空間)など、厳密ではありませんがそのような建築と木質材料の関係が条件となるでしょう。

小樽教会 外観

礼拝堂内部
では「日本基督教団 小樽教会」を例に、木育建築の特徴を見てみたいと思います。延べ面積400㎡の木造2階建ての教会ですが、木育建築のモデルとなるよう計画されました。150年の歴史ある小樽教会です。この永い信仰の伝統を目に見える形で表現すべく、初代教会の床材,椅子,説教壇,聖餐台,大中小三つの鐘などを、新教会に再利用して活かしています。古く壊れかけた家具類を丁寧に再生することで、記憶装置としての木の力と魅力を引き出しました。

家具とレリーフ

構造架構図
木材はこの教会建設のために倶知安町の森で伐採したカラマツ材を用い、無駄が出ないように構造材や外装材に使用しています。礼拝堂の架構は一般的な長さ3.6mで断面12×35cmに加工した無垢の製材を用い、集成材を使わない新しい構造架構方式による建築デザインを目指しました。古い教会の床に使ってきた道産ナラ材のフローリングなども再利用しています。新旧の木材が目に見え、手で触れられるように使用することで、木のぬくもりと優しさが感じられる建築です。ぜひ外部だけではなく内部の空間も体験してください。鳩の木製レリーフが迎えてくれるはずです。
◆建築家 下村 憲一
建築の構造材に木材を使っていることを一般的には「木造建築」と呼びますが、建築空間における木材の持つ良さや可能性を伝えるものではありません。この20年の間に、単なる木造建築ではなく木育建築と呼ぶのが相応しい建築が増えています。人の生活のなかで「木とふれあい、木に学び、木と生きる」ことを大切にした木育建築をしっかりと評価して、木育の理念を感じる建築をこれからも増やしていきましょう。
ではあらためて木育建築とはどのような建築なのか考えてみます。
一つ目はそこで使われている木材が周辺地域の森とつながっていること(地産地消)、二つ目はその中に地域の歴史や風土とのつながりが感じられること(地域風土)、三つ目はその建築技術に地域の産業とのつながりが見えること(地場産業)、四つ目は木のぬくもりがそこに集う人を優しく結びつける建築であること(木質空間)など、厳密ではありませんがそのような建築と木質材料の関係が条件となるでしょう。

小樽教会 外観

礼拝堂内部
では「日本基督教団 小樽教会」を例に、木育建築の特徴を見てみたいと思います。延べ面積400㎡の木造2階建ての教会ですが、木育建築のモデルとなるよう計画されました。150年の歴史ある小樽教会です。この永い信仰の伝統を目に見える形で表現すべく、初代教会の床材,椅子,説教壇,聖餐台,大中小三つの鐘などを、新教会に再利用して活かしています。古く壊れかけた家具類を丁寧に再生することで、記憶装置としての木の力と魅力を引き出しました。

家具とレリーフ

構造架構図
木材はこの教会建設のために倶知安町の森で伐採したカラマツ材を用い、無駄が出ないように構造材や外装材に使用しています。礼拝堂の架構は一般的な長さ3.6mで断面12×35cmに加工した無垢の製材を用い、集成材を使わない新しい構造架構方式による建築デザインを目指しました。古い教会の床に使ってきた道産ナラ材のフローリングなども再利用しています。新旧の木材が目に見え、手で触れられるように使用することで、木のぬくもりと優しさが感じられる建築です。ぜひ外部だけではなく内部の空間も体験してください。鳩の木製レリーフが迎えてくれるはずです。
◆建築家 下村 憲一
木育の種、咲かせた花~第6回 サッポロの山 サッポロの木 サッポロの人 - 2023.08.14 Mon
木育のキーワードの中に「木から人と森のつながりを考える」と「五感を育む」があります。私たちのまわりでは、一枚の紙から家具や建物にいたるまで木がたくさん使われているのに、その木が生きていた森を想像できる人はどれだけいるでしょうか?木と五感でふれあうことで、人も自然の一部であることを実感し、自然に対する思いやりや優しさを育むことが、木育の目指す姿の一つです。
このキーワードを実感できるイベントが、先日2023年7月8日に札幌でありました。その名も「サッポロの山 サッポロの木 サッポロの人」。
イベントの主役といえる存在が、札幌南高等学校林で2018年の台風で半倒れになったハルニレの木でした。この木は半分根が浮いていて、近くのカラマツ3本に自重を支えられている状態でありながら、残った半分の根で命をつなぎとめ、5年経った今も生きた葉を茂らせていました。

ハルニレの木を伐採し木製品として生まれ変わらせるために、道内で活躍する木こりや木工家をクリエイティブオフィスキューというタレント事務所のお笑いコンビ「オクラホマ」の河野真也さんがつなぎ、集めたのがこのイベントでした。サッポロの山で育ったハルニレという木の元に、伐り手、作り手、そして木製品の買い手となる人約50人が集まり、直接林業の現場に触れ、木工家と欲しいものを相談して製品を買うという、生産者と消費者の顔が見えるものづくりが実現したのでした。

イベントでは、学校林を散策しながら、森の手入れをしている木こりの足立さんが、木の種類や森の手入れをするための作業道の作り方などをわかりやすく説明してくれました。

そして森の中に突然現れる木工家ブース。参加者は実際の作品イメージを見ながら、ハルニレで制作してほしいものを作り手と相談して決め、約1年後の仕上がりを待つことになります。完結まで1年かかるイベントを、私は他に知りません。ちなみに私は、チエモク㈱でヘアアクセサリーをオーダーしました。完成が楽しみです。

ではもう一つのキーワード「五感を育む」は?
視覚:森の緑、木によって異なる葉の形、樹皮の模様、目の当たりにする伐採現場の迫力
聴覚:木こりさんの優しい解説、葉にそよぐ風の音、チェーンソーの爆音
嗅覚:森の中で感じる葉、土、空気の色んなにおい
触覚:この日の札幌市の街中気温は30℃超え。それに比べて森の中はひんやりしてなんと心地よかったことか。
味覚:木は食べられないじゃないかと侮るなかれ。散策中に見つけた桑の実を取って、おそるおそる食べてみる子どもたち。ベリー系の酸っぱさと甘さに歓声が上がりました。

私がいいなと感じたのは、「森は気持ちいい」「木製品が素敵」だけでは終わらないイベントだったこと。伐採作業には危険が伴い、森の中ではスズメバチも飛んでいました。伐採した木を乾燥して、製品に加工できるまでには1年近い期間が必要なことも、マイナスに捉えられるかもしれません。
でも、林業・木材産業のいいも悪いも含めて知ってほしい。興味を持ってほしい。山と木と人がつながると、新しくて楽しい何かが生み出せる。それを実感できるイベントでした。これからもこんなイベントが開催されてほしいし、自分たちでも提供できるようになりたい。そう思います。
(文 水産林務部林業木材課 根井三貴)
このキーワードを実感できるイベントが、先日2023年7月8日に札幌でありました。その名も「サッポロの山 サッポロの木 サッポロの人」。
イベントの主役といえる存在が、札幌南高等学校林で2018年の台風で半倒れになったハルニレの木でした。この木は半分根が浮いていて、近くのカラマツ3本に自重を支えられている状態でありながら、残った半分の根で命をつなぎとめ、5年経った今も生きた葉を茂らせていました。

ハルニレの木を伐採し木製品として生まれ変わらせるために、道内で活躍する木こりや木工家をクリエイティブオフィスキューというタレント事務所のお笑いコンビ「オクラホマ」の河野真也さんがつなぎ、集めたのがこのイベントでした。サッポロの山で育ったハルニレという木の元に、伐り手、作り手、そして木製品の買い手となる人約50人が集まり、直接林業の現場に触れ、木工家と欲しいものを相談して製品を買うという、生産者と消費者の顔が見えるものづくりが実現したのでした。

イベントでは、学校林を散策しながら、森の手入れをしている木こりの足立さんが、木の種類や森の手入れをするための作業道の作り方などをわかりやすく説明してくれました。

そして森の中に突然現れる木工家ブース。参加者は実際の作品イメージを見ながら、ハルニレで制作してほしいものを作り手と相談して決め、約1年後の仕上がりを待つことになります。完結まで1年かかるイベントを、私は他に知りません。ちなみに私は、チエモク㈱でヘアアクセサリーをオーダーしました。完成が楽しみです。

ではもう一つのキーワード「五感を育む」は?
視覚:森の緑、木によって異なる葉の形、樹皮の模様、目の当たりにする伐採現場の迫力
聴覚:木こりさんの優しい解説、葉にそよぐ風の音、チェーンソーの爆音
嗅覚:森の中で感じる葉、土、空気の色んなにおい
触覚:この日の札幌市の街中気温は30℃超え。それに比べて森の中はひんやりしてなんと心地よかったことか。
味覚:木は食べられないじゃないかと侮るなかれ。散策中に見つけた桑の実を取って、おそるおそる食べてみる子どもたち。ベリー系の酸っぱさと甘さに歓声が上がりました。

私がいいなと感じたのは、「森は気持ちいい」「木製品が素敵」だけでは終わらないイベントだったこと。伐採作業には危険が伴い、森の中ではスズメバチも飛んでいました。伐採した木を乾燥して、製品に加工できるまでには1年近い期間が必要なことも、マイナスに捉えられるかもしれません。
でも、林業・木材産業のいいも悪いも含めて知ってほしい。興味を持ってほしい。山と木と人がつながると、新しくて楽しい何かが生み出せる。それを実感できるイベントでした。これからもこんなイベントが開催されてほしいし、自分たちでも提供できるようになりたい。そう思います。
(文 水産林務部林業木材課 根井三貴)
木育の種、咲かせた花〜第5回 大人の木育〜クラフトジンで森とつながる〜 - 2023.06.12 Mon
今回は、第44回全国育樹祭の開催記念につくられた「TOMATOH NAGOMINOMORI GIN」(これより、和みの森ジン)の開発ストーリーをご紹介したいと思います。
まず初めに、私は当時苫小牧市の地域おこし協力隊として、苫東・和みの森運営協議会に事務局として所属していました、八木です。
全国育樹祭の機運の醸成や市民参加型の森づくりの推進を目的に、「月に一度は森づくり!」などの活動を行っていました。そのような中で、貴重なご縁をいただき、このクラフトジンの開発にも携わらせていただきました。
そもそも、この和みの森ジンを開発することになったきっかけは、全国育樹祭2020が延期となり行われた1周年前記念イベントの際に、木育の中心メンバーが集まった「木育座談会」です。
ここでは、緑の女神の井戸川さんがモデレーターとなり、木育の事例紹介やこれからの木育についてのディスカッションが行われました。
この座談会の中で、官民が連携して「北海道の木育」を表現する記念品をつくって、全国にPRしようという話になったと記憶しています。

木育座談会メンバー
そこで、「北海道の木育」とは何か?全国的に見ると、まだまだ木育という言葉は、木のおもちゃや子どもの遊びというイメージが強いです。私たちは、「北海道の木育」の持つ、「木とふれあい、木に学び、木と生きる」というコンセプトをもとに、「大人の木育」を表現することのできる「TOMATOH NAGOMINOMORI GIN」の開発をはじめました。
ジンのために、資源を使用するのではなく、森林の循環の一部にジンを取り入れるために間伐材を活用することや、素材の採集も和みの森の活動に参加する市民のみなさまに協力していただきながら、苫東・和みの森運営協議会ガ中心となり進めていくことにしました。
まず、ジンの素材は大きく分けるとアカエゾマツ、白樺の枝葉です。次に、苫小牧市のとまチョップ水、最後に味のアクセントとして北海道七飯町のりんごの皮が利用されています。それらの北海道、苫小牧産の素材に積丹スピリットのオリジナルフレーバーがブレンドされて和みの森ジンができあがります。
資源採集は、2021年4月半ばにアカエゾマツの除伐間伐採集を行いました。この時は、地域のボランティアスタッフや森と緑の会のスタッフが参加しました。
5月後半には和みの森で行われている「月に一度は森づくり!」にて、参加者の子どもたちや親子と一緒に白樺の採集を行いました。



資源の採集が終わると、いよいよ和みの森ジンの味を決める、ブレンド会議です。
積丹スピリットの秘伝のジンをベースに、和みの森のアカエゾマツとシラカバの枝葉と、七飯町のりんごの皮をアルコール蒸留したものを、混ぜ合わせて、味を決めていきます。これは、本当にプロにしかできない技なのだと思いますが、ブレンド比率によって、全く異なる味になり、試飲をすることもかなり貴重で楽しい体験でした。ここだけの話、実はブレンド会議では、現在販売されているジンは一番人気ではなかった!?
というのも、育樹祭記念ジンをつくるのに集まったみなさんは、ジンなども飲み慣れており、ひと工夫された味がお好みだったようで、まろやかで飲みやすい味わいのある現在のジンは皆さん2番手に置いていたみたい・・・笑。しかし、育樹祭に参加するみなさんや市民のみなさま方に手に取ってもらいやすく、ジンに馴染みの深くない人でも、楽しめるようなジンを作りましょう!ということで、満場一致で現在の和みの森ジンの味になりました。




ラベリングやパッケージは、積丹スピリットとKEM工房主宰の煙山さんが中心となってデザインしました。森でジンを飲むことを大切に、2重キャップやポケットにフィットするなど、ボトルデザインの意匠にもこだわったつくりになっています。
資源採集、ブレンド会議、パッケージデザインを経て、晴れて「TOMATOH NAGOMINOMORI GIN」が完成しました!全国育樹祭をはじめ、育樹・木育行事等で和みの森ジンを通して、北海道の木育、大人の木育をみなさんに知ってもらうことができました。

苫東・和みの森運営協議会「月に一度は森づくり」についてはコチラから
積丹スピリットのショップはコチラから
最後に、この全国育樹祭、和みの森ジンプロジェクトを通して、僕自身が北海道の木育ってなんだろう?大人の木育はどう表現したらいいだろう?と、木に触れて、学び、共に生きるというコンセプトを実感することができました。全国の木育実践者には、このジンや市民参加型の森づくり活動が、地域の森づくりや社会課題を解決する大きなヒントになったという声をかけていただくことが多くありました。これからも、北海道の木育が多くの人に触れていただく機会をつくって行ければいいなと思いました。
◆苫東・和みの森運営協議会 八木一馬
まず初めに、私は当時苫小牧市の地域おこし協力隊として、苫東・和みの森運営協議会に事務局として所属していました、八木です。
全国育樹祭の機運の醸成や市民参加型の森づくりの推進を目的に、「月に一度は森づくり!」などの活動を行っていました。そのような中で、貴重なご縁をいただき、このクラフトジンの開発にも携わらせていただきました。
そもそも、この和みの森ジンを開発することになったきっかけは、全国育樹祭2020が延期となり行われた1周年前記念イベントの際に、木育の中心メンバーが集まった「木育座談会」です。
ここでは、緑の女神の井戸川さんがモデレーターとなり、木育の事例紹介やこれからの木育についてのディスカッションが行われました。
この座談会の中で、官民が連携して「北海道の木育」を表現する記念品をつくって、全国にPRしようという話になったと記憶しています。

木育座談会メンバー
そこで、「北海道の木育」とは何か?全国的に見ると、まだまだ木育という言葉は、木のおもちゃや子どもの遊びというイメージが強いです。私たちは、「北海道の木育」の持つ、「木とふれあい、木に学び、木と生きる」というコンセプトをもとに、「大人の木育」を表現することのできる「TOMATOH NAGOMINOMORI GIN」の開発をはじめました。
ジンのために、資源を使用するのではなく、森林の循環の一部にジンを取り入れるために間伐材を活用することや、素材の採集も和みの森の活動に参加する市民のみなさまに協力していただきながら、苫東・和みの森運営協議会ガ中心となり進めていくことにしました。
まず、ジンの素材は大きく分けるとアカエゾマツ、白樺の枝葉です。次に、苫小牧市のとまチョップ水、最後に味のアクセントとして北海道七飯町のりんごの皮が利用されています。それらの北海道、苫小牧産の素材に積丹スピリットのオリジナルフレーバーがブレンドされて和みの森ジンができあがります。
資源採集は、2021年4月半ばにアカエゾマツの除伐間伐採集を行いました。この時は、地域のボランティアスタッフや森と緑の会のスタッフが参加しました。
5月後半には和みの森で行われている「月に一度は森づくり!」にて、参加者の子どもたちや親子と一緒に白樺の採集を行いました。



資源の採集が終わると、いよいよ和みの森ジンの味を決める、ブレンド会議です。
積丹スピリットの秘伝のジンをベースに、和みの森のアカエゾマツとシラカバの枝葉と、七飯町のりんごの皮をアルコール蒸留したものを、混ぜ合わせて、味を決めていきます。これは、本当にプロにしかできない技なのだと思いますが、ブレンド比率によって、全く異なる味になり、試飲をすることもかなり貴重で楽しい体験でした。ここだけの話、実はブレンド会議では、現在販売されているジンは一番人気ではなかった!?
というのも、育樹祭記念ジンをつくるのに集まったみなさんは、ジンなども飲み慣れており、ひと工夫された味がお好みだったようで、まろやかで飲みやすい味わいのある現在のジンは皆さん2番手に置いていたみたい・・・笑。しかし、育樹祭に参加するみなさんや市民のみなさま方に手に取ってもらいやすく、ジンに馴染みの深くない人でも、楽しめるようなジンを作りましょう!ということで、満場一致で現在の和みの森ジンの味になりました。




ラベリングやパッケージは、積丹スピリットとKEM工房主宰の煙山さんが中心となってデザインしました。森でジンを飲むことを大切に、2重キャップやポケットにフィットするなど、ボトルデザインの意匠にもこだわったつくりになっています。
資源採集、ブレンド会議、パッケージデザインを経て、晴れて「TOMATOH NAGOMINOMORI GIN」が完成しました!全国育樹祭をはじめ、育樹・木育行事等で和みの森ジンを通して、北海道の木育、大人の木育をみなさんに知ってもらうことができました。

苫東・和みの森運営協議会「月に一度は森づくり」についてはコチラから
積丹スピリットのショップはコチラから
最後に、この全国育樹祭、和みの森ジンプロジェクトを通して、僕自身が北海道の木育ってなんだろう?大人の木育はどう表現したらいいだろう?と、木に触れて、学び、共に生きるというコンセプトを実感することができました。全国の木育実践者には、このジンや市民参加型の森づくり活動が、地域の森づくりや社会課題を解決する大きなヒントになったという声をかけていただくことが多くありました。これからも、北海道の木育が多くの人に触れていただく機会をつくって行ければいいなと思いました。
◆苫東・和みの森運営協議会 八木一馬
木育の種、咲かせた花~第4回 おとの森ができるまで - 2023.05.15 Mon
おとの森を語るには、北海道におけるアカエゾマツの歴史について触れなければならない。
ピアノという楽器には、部品の多くに木材が使われている。その中で、響板という、文字通り音を響かせるための部品に主に用いられてきたのがアカエゾマツという木だ。
北海道遠軽町丸瀬布という地域には、かつて豊富なアカエゾマツの天然資源があった。これこそが、ヤマハ㈱へピアノ部品を供給する北見木材㈱が、丸瀬布に工場を構えた理由であった。ヤマハのピアノから奏でられる音色は、北海道の木材資源から作られていたのだ。ただ、北見木材㈱は今でも響板の製造・供給を行っているが、北海道産のアカエゾマツ天然資源は少なくなっており、今は輸入材の取扱いが主となっている。

一方、アカエゾマツがトドマツ、カラマツにつぐ第3の造林樹種として、北海道内で造林されるようになったのは、ざっと50年ほど前になる。アカエゾマツは、他の樹種に比べて耐寒性に優れ、動物の食害を受けにくいという利点があるが、成長が進むにつれ、カラマツほどの強度はなく、ヤニやねじれが多いという人工林材の欠点も明らかになっていった。過酷な環境を百年単位で生きてきた天然林材に比べて、人工林材は木材が生産されるようになっても使い道がないのではないか?そんなマイナスイメージが噂されていたのが、今から20年くらい前のことになる。
そんな時、北見市の道有林で、試験的に造林されていた70年生を超えるアカエゾマツ人工林材が、台風被害を受けて倒れた。まだ造林の歴史が浅かったアカエゾマツ人工林材は、材質調査のために研究機関に運ばれることになり、その研究機関と北見木材㈱につながりがあった。それから数年かけて、北見市の森づくりセンター(現在のオホーツク総合振興局東部森林室)、林産試験場(現在の(地独)北海道立総合研究機構林産試験場)、北見木材㈱における人とのつながり、働きかけが紆余曲折あって、北見木材㈱でアカエゾマツ人工林材を使ったピアノ響板を試作してもらえることになった。

ピアノ響板は、ヤニの穴や節がなく、年輪幅が均一に並んでいる必要があり、丸太から得られる木材のうち、使える部分はごくごく一部という厳しい基準がある。それでもアカエゾマツ人工林材から製造された響板は、ピアノの音響性能に問題なしという結果が得られた。これは、アカエゾマツ人工林を育てても価値がないと落ち込んでいた業界にとって、いい材を育てれば楽器材としての可能性があるという希望になった。
その後、北見木材㈱は「天然林でも人工林でも、北海道の森で、またピアノが製造できる木が育つようお手伝いができたら」と、オホーツク総合振興局、遠軽町と協定を結び、アカエゾマツの森づくりや木育に取り組んでいくこととなった。2021年には、ヤマハ㈱と北海道が包括連携協定を結び、「おとの森」と題した活動を展開。木の文化を次世代へつないでいくことを目指している。
アカエゾマツがピアノになるまでは、ともすると100年を超える年月がかかる。100年後の未来、北海道のアカエゾマツで作られたピアノが音を響かせるには、今種をまく必要がある。かくして、アカエゾマツの小さな苗木たちからなる「おとの森」が誕生した。木の長い寿命からすると、その活動はまだ始まったばかりだ。
◆北海道水産林務部森林計画課 根井三貴
ピアノという楽器には、部品の多くに木材が使われている。その中で、響板という、文字通り音を響かせるための部品に主に用いられてきたのがアカエゾマツという木だ。
北海道遠軽町丸瀬布という地域には、かつて豊富なアカエゾマツの天然資源があった。これこそが、ヤマハ㈱へピアノ部品を供給する北見木材㈱が、丸瀬布に工場を構えた理由であった。ヤマハのピアノから奏でられる音色は、北海道の木材資源から作られていたのだ。ただ、北見木材㈱は今でも響板の製造・供給を行っているが、北海道産のアカエゾマツ天然資源は少なくなっており、今は輸入材の取扱いが主となっている。

一方、アカエゾマツがトドマツ、カラマツにつぐ第3の造林樹種として、北海道内で造林されるようになったのは、ざっと50年ほど前になる。アカエゾマツは、他の樹種に比べて耐寒性に優れ、動物の食害を受けにくいという利点があるが、成長が進むにつれ、カラマツほどの強度はなく、ヤニやねじれが多いという人工林材の欠点も明らかになっていった。過酷な環境を百年単位で生きてきた天然林材に比べて、人工林材は木材が生産されるようになっても使い道がないのではないか?そんなマイナスイメージが噂されていたのが、今から20年くらい前のことになる。
そんな時、北見市の道有林で、試験的に造林されていた70年生を超えるアカエゾマツ人工林材が、台風被害を受けて倒れた。まだ造林の歴史が浅かったアカエゾマツ人工林材は、材質調査のために研究機関に運ばれることになり、その研究機関と北見木材㈱につながりがあった。それから数年かけて、北見市の森づくりセンター(現在のオホーツク総合振興局東部森林室)、林産試験場(現在の(地独)北海道立総合研究機構林産試験場)、北見木材㈱における人とのつながり、働きかけが紆余曲折あって、北見木材㈱でアカエゾマツ人工林材を使ったピアノ響板を試作してもらえることになった。

ピアノ響板は、ヤニの穴や節がなく、年輪幅が均一に並んでいる必要があり、丸太から得られる木材のうち、使える部分はごくごく一部という厳しい基準がある。それでもアカエゾマツ人工林材から製造された響板は、ピアノの音響性能に問題なしという結果が得られた。これは、アカエゾマツ人工林を育てても価値がないと落ち込んでいた業界にとって、いい材を育てれば楽器材としての可能性があるという希望になった。
その後、北見木材㈱は「天然林でも人工林でも、北海道の森で、またピアノが製造できる木が育つようお手伝いができたら」と、オホーツク総合振興局、遠軽町と協定を結び、アカエゾマツの森づくりや木育に取り組んでいくこととなった。2021年には、ヤマハ㈱と北海道が包括連携協定を結び、「おとの森」と題した活動を展開。木の文化を次世代へつないでいくことを目指している。
アカエゾマツがピアノになるまでは、ともすると100年を超える年月がかかる。100年後の未来、北海道のアカエゾマツで作られたピアノが音を響かせるには、今種をまく必要がある。かくして、アカエゾマツの小さな苗木たちからなる「おとの森」が誕生した。木の長い寿命からすると、その活動はまだ始まったばかりだ。
◆北海道水産林務部森林計画課 根井三貴
木育の種、咲かせた花~第3回 積丹発大人の木育としての「クラフトジン」 - 2023.04.16 Sun
私が木育という言葉に出会ったのは、平成16年に道内建設コンサルタント会社から北海道庁知事政策部に出向した際のこと。当時、知事政策部が庁内に募集した協働政策に水産林務部から「木育」の趣旨が提案されたのが始まりです。
当時、「木育」と言っても、「食育」のようにわかりやすい理解を得るため、窓口担当として、水産林務部や各方面の専門家とともに、その概念や取組範囲について議論を重ね、「木育」の原型を作り上げたのが良い思い出です。
そのころ、道内の木工家による「木のおもちゃ」や、東川町で始まった「君の椅子」、森を学ぶプログラムなどが私にとってわかりやすい木育でしたが、もっと日常的で収益にもつながるものがないものか、といろいろ思いを巡らせていたことを思い出します。
時は経ち、2015年(平成27年)、平成19年に独立開業した農林水産業のコンサルタント会社、(株)GB産業化設計で、積丹町の遊休施設や耕作放棄地の有効活用を促進する冊子づくり(プロジェクトブック)の仕事を請け負い、調査を進めていたところ、ヒントを得ようと訪れた「木のおもちゃ」の第一人者であり、木育の生みの親の一人でもあるKEM工房主宰の煙山泰子さんから、スコットランド「BLACK WOODS蒸溜所」と「ジン」の存在を紹介され、風も強く、寒冷な気候の積丹に合っているのではないか?とのアイデアをいただきました。

積丹町では、内閣府が主導する「地方創生事業」の提案機会にプロジェクトを提案するタイミングにあり、役場の皆さんや、煙山さん、それに植生のプロなどを加えたプロジェクトチームでつくった提案内容が通り、町長、副町長、課長さんたちの満場一致をもって、「地域の植生を活用したスピリッツ開発事業」がスタートを切ることになりました。
そもそも、「ジン」というお酒は、ヒノキ科の球果であるジュニパーベリーを主原料として、37.5度以上の蒸留酒という定義があり、イギリスやドイツを中心に世界各地で日常的に飲まれるお酒ですが、とても面白いと思ったのは、地域の特産的なボタニカルフレーバーを加えてオリジナリティを表現していることでした。日本でも私たちが検討を開始した2016年に「京都蒸溜所」が「季の美」というブランドでジン専門蒸溜所を開設するなど、日本における「ジン」ブームがここから始まっています。
「積丹ジンプロジェクト」は京都に後れをとったものの、耕作放棄地を耕し自らがハーブや香りのする樹木を植えるなど、原料生産から立ち上げる路線をたどる一方、2016年の冬にスコットランド、イギリスを訪ね、ロンドン中心部にあるシティオブロンドン蒸溜所にで、ジンのレシピのヒントを得て、2017年、広島にある酒類総合研究所との共同研究(試験蒸溜)を経て、独自のレシピの原型を確立しました。

積丹ジンの最大の特徴は、ボタニカルの香りを最大限に引き出すため、自社生産・採取したハーブや樹木の実や枝、葉などを原料化し、植物毎に別々の蒸溜を行い、ジンのベースとブレンドして作り上げる方法にあり、この方法により、関心を持っていただける多くの皆様に参加いただきながらオリジナルのジンを作り上げるプロセスが可能となりました。
煙山さんも私も、木育創生期からその理念を話し合ってきた仲間であり、双方に考えていた蒸溜の形は、すなわち木育の形であったということになります。
ジンは香りのお酒、積丹半島や北海道に自生するボタニカルに着目し、その自然の恵みからヒントを得た蒸溜酒は、植生や木育、お酒の専門家により立ち上げられる道をたどり、原料生産から原料化、蒸溜、ブレンドをすべて自社に内製化した世界でも珍しい蒸溜所となりました。
この取組も評価され、2022年、初出品した東京ウイスキー&スピリッツコンペティションにおいて、日本の数ある銘柄での中で金賞受賞(全体の5位の評価)を得て、その存在が国内、世界に知られるところとなりました。


私たちは、積丹半島の自然に生かされながらジンという香りのお酒づくりを営む会社です。
これこそ私がイメージしてきた、自然とたわむれる大人の木育の世界。
この世界に磨きをかけ、積丹半島に、そして北海道に、世界からたくさんの人たちが遊びに来て「木育」(MOKUIKU)が世界に広がることを願っています。
北海道からはじまった日本の「木育」を、ジンを飲んで世界の「MOKUIKU」として広げていきましょう!
◆(株)GB産業化設計/(株)積丹スピリット 代表取締役 岩井宏文
当時、「木育」と言っても、「食育」のようにわかりやすい理解を得るため、窓口担当として、水産林務部や各方面の専門家とともに、その概念や取組範囲について議論を重ね、「木育」の原型を作り上げたのが良い思い出です。
そのころ、道内の木工家による「木のおもちゃ」や、東川町で始まった「君の椅子」、森を学ぶプログラムなどが私にとってわかりやすい木育でしたが、もっと日常的で収益にもつながるものがないものか、といろいろ思いを巡らせていたことを思い出します。
時は経ち、2015年(平成27年)、平成19年に独立開業した農林水産業のコンサルタント会社、(株)GB産業化設計で、積丹町の遊休施設や耕作放棄地の有効活用を促進する冊子づくり(プロジェクトブック)の仕事を請け負い、調査を進めていたところ、ヒントを得ようと訪れた「木のおもちゃ」の第一人者であり、木育の生みの親の一人でもあるKEM工房主宰の煙山泰子さんから、スコットランド「BLACK WOODS蒸溜所」と「ジン」の存在を紹介され、風も強く、寒冷な気候の積丹に合っているのではないか?とのアイデアをいただきました。

積丹町では、内閣府が主導する「地方創生事業」の提案機会にプロジェクトを提案するタイミングにあり、役場の皆さんや、煙山さん、それに植生のプロなどを加えたプロジェクトチームでつくった提案内容が通り、町長、副町長、課長さんたちの満場一致をもって、「地域の植生を活用したスピリッツ開発事業」がスタートを切ることになりました。
そもそも、「ジン」というお酒は、ヒノキ科の球果であるジュニパーベリーを主原料として、37.5度以上の蒸留酒という定義があり、イギリスやドイツを中心に世界各地で日常的に飲まれるお酒ですが、とても面白いと思ったのは、地域の特産的なボタニカルフレーバーを加えてオリジナリティを表現していることでした。日本でも私たちが検討を開始した2016年に「京都蒸溜所」が「季の美」というブランドでジン専門蒸溜所を開設するなど、日本における「ジン」ブームがここから始まっています。
「積丹ジンプロジェクト」は京都に後れをとったものの、耕作放棄地を耕し自らがハーブや香りのする樹木を植えるなど、原料生産から立ち上げる路線をたどる一方、2016年の冬にスコットランド、イギリスを訪ね、ロンドン中心部にあるシティオブロンドン蒸溜所にで、ジンのレシピのヒントを得て、2017年、広島にある酒類総合研究所との共同研究(試験蒸溜)を経て、独自のレシピの原型を確立しました。

積丹ジンの最大の特徴は、ボタニカルの香りを最大限に引き出すため、自社生産・採取したハーブや樹木の実や枝、葉などを原料化し、植物毎に別々の蒸溜を行い、ジンのベースとブレンドして作り上げる方法にあり、この方法により、関心を持っていただける多くの皆様に参加いただきながらオリジナルのジンを作り上げるプロセスが可能となりました。
煙山さんも私も、木育創生期からその理念を話し合ってきた仲間であり、双方に考えていた蒸溜の形は、すなわち木育の形であったということになります。
ジンは香りのお酒、積丹半島や北海道に自生するボタニカルに着目し、その自然の恵みからヒントを得た蒸溜酒は、植生や木育、お酒の専門家により立ち上げられる道をたどり、原料生産から原料化、蒸溜、ブレンドをすべて自社に内製化した世界でも珍しい蒸溜所となりました。
この取組も評価され、2022年、初出品した東京ウイスキー&スピリッツコンペティションにおいて、日本の数ある銘柄での中で金賞受賞(全体の5位の評価)を得て、その存在が国内、世界に知られるところとなりました。


私たちは、積丹半島の自然に生かされながらジンという香りのお酒づくりを営む会社です。
これこそ私がイメージしてきた、自然とたわむれる大人の木育の世界。
この世界に磨きをかけ、積丹半島に、そして北海道に、世界からたくさんの人たちが遊びに来て「木育」(MOKUIKU)が世界に広がることを願っています。
北海道からはじまった日本の「木育」を、ジンを飲んで世界の「MOKUIKU」として広げていきましょう!
◆(株)GB産業化設計/(株)積丹スピリット 代表取締役 岩井宏文