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お話の木(その1)トネリコの木 -  2020.10.14 Wed

先日、道庁前の庭で樹木を見て廻った時、新しい発見をした。
何度も訪れている場所のはずだったが、たいていいつも、へえ、こんな木あったっけ、と思う。今回はトネリコだった。正面広場からだいぶ離れているせいもあるかもしれない。いや、白状しよう。京極にある私たちの山に生えている木は何とか大体は分かるようになったが、それ以外の木となるとさっぱりなのだ。あの木もこの木も、なんじゃもんじゃの木、というわけ。
それで木について何か書こうというのだから、あきれたものである。

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ところで今回お知り合いになったトネリコの木である。
じつは小学校のころ、お話の中で出会っていた。翻訳ものの怪奇小説で、内容はおぼろげにしか覚えていないが、庭のトネリコの木から大量の虫がぞろぞろ這いだして来るというとても怖い話だった。子供の頃、虫が極端に嫌いだったのは、あれがトラウマになったのではないかという気がする。
トネリコにはそれ以後も本の中で会っている。北欧神話では、聖なるウルズの泉から生えたユグドラシル(世界樹)が世界を形作っていると云われるが、それがトネリコの木だという。そういえば、ハリーポッターにも、トネリコの杖が出てきたっけ。正しくはこれらはみんな、セイヨウトネリコという種類らしい。しかしどちらもキンモクセイ科というから、見た目は似ているに違いないと勝手に思う。

樹皮は暗灰色、葉は羽状複葉で対生。春には白いふんわりとした花を付け、実は翼果。和名のトネリコの由来は、『戸に塗る木』という説もある。木に付くイボタロウムシ(やっぱり虫か!)から採った蝋物質を、敷居に塗って滑りを良くしたんだとか。昔は、稲のはさがけにも使われていたそうだ。里には身近な木といえるだろう。

道庁の庭で、少し緊張してかの木を見上げる。かなり立派な大木に育っている。
今のところワラワラと虫が出てくる気配はない。世界をすっぽりと覆い尽くしてしまう心配もなさそうだ。
まあ、宜しく頼むよと、何だか訳の分からない言葉を心の中でかけて、トネリコの木に背を向けた。



◆木育マイスター/ようてい木育倶楽部 齊藤 香里

木を描く -  2020.10.14 Wed

KEMさんの木育生活10

「この木、いいな」「この葉、キレイだな」と感じて記録に残したいと思った時、多くの人は写真に撮るのではないでしょうか。いつも身近にスマホやカメラがあるので、手軽にその瞬間を画像に留めることができるようになりました。
でも、じっくり木に向き合って「描く」のはまた格別の楽しさがあります。
木の幹や枝のつき方、樹皮や葉っぱの質感、木の全体を見ていると根の張り具合まで観察するようになるのです。よーく見つめていると、なんだか木の声が聞こえてくるような気さえします。
ゆっくりとそんな時間を味わいたくて、今年は年間10本の木を描こうと意気込んでいたのですが・・・まだ2本だけしか実現していません。それは自宅のブナと、初めて出会ったタマリンドの木です。

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実際に描いているのは一時間ほどなのですが、なんとも言えず心豊かなひと時でした。
ですが・・・実際に用具を揃えてスケッチするのは手間もかかるし、ハードルが高いと感じる方には「フロッタージュ(こすり描き)」をお勧めします。

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フロッタージュ(frottage:仏)とは、デコボコのあるものの上に紙を置き、鉛筆などでこするように描くことで対象を写し取る技法で、フランス語の「frotter(こする)」に由来します。
使用する紙は、比較的薄くて柔軟性があり、こすっても破れにくい上質紙や薄い和紙などが適します。私がよく使うのは昔の学校で使われていた「わらばん紙」で、鉛筆、コンテ、クレパスなど適度な硬さを持つ画材でこすります。これなら身近な木の葉や板を使ってすぐに描けますし、木育のプログラムにすることもできます。

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私が津別町でやっている木育授業では、最初に説明をしてから木の葉採取に出かけ、葉の裏側を使ってこすり描きします。目で見ていた時とは違う繊細な自然の造形が、紙の上に現れます。
自分のセンスを生かして自由にやっているうちに、だんだんと熱が入り力作に!それぞれの個性あふれる作品ができました。最後に葉の名前や特徴、場所と日時も入れると採取記録にもなります。

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自分の手で描く楽しさに目覚めたら周囲を見る目が変わって、なんでもこすり書きしたくなりました。
こんな風に、ナラの古びたフローリングもアート作品のようです。

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◆KEM工房/木育ファミリー顧問 煙山 泰子 

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