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種市さんの「ダニ媒介 回帰熱」始末記(1)全3回 -  2018.10.18 Thu

■はじめに
本年3月の定年退職を期に、四半世紀に及んだ役人生活からきれいさっぱり足を洗って、「髪結いの亭主」とまではいかないものの、年金支給日までは女房の稼ぎを頼りに暮らそうと都合のよいことを考えていました。
アルバイトで小遣いを得ながら、バイクで全国の温泉や美術館を巡り、美しい海辺に野営して夕焼けに感動する、こんな夢がとうとう叶う時がきたんだと胸躍らせていたのですが、世の中そううまくはいかないようです。諸般の事情により、恥ずかしながらもう数年(?)ほど、林務行政の末席を汚すことになって、この4月から平取町(日高)にある道の林業関係の事務所に席をいただいています。誠にありがたいことではありますが。
さて、山林に分け入る機会の多かったこの25年間、幸いにも大きな事故や怪我に見舞われることはありませんでしたが、ただ三度経験した「ウルシかぶれ」の激烈で幾日にもわたる痒みの辛さは忘れられないものです。

■辛い「ウルシかぶれ」
昨年末、ある林業関係の小冊子に「ウルシ」について寄稿しました。その種類や特徴、そして世界に誇る伝統工芸について触れるとともに、その二月ほど前に被った悲惨な「かぶれ」について報告したのです。

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「ウルシかぶれ」については、道職員となったばかりの平成5年春に惨憺たる経験をして以来20年以上、春先に地面を這うどんなに小さな新葉も見逃すことがないくらいに細心の注意を払ってきたのですが、退職間近の気の緩みでしょうか、なんと平成27年の夏、そして29年の秋と再び辛い辛い日々を送ることになってしまいました。
昨年のかぶれでは手の他にこれまで経験のなかった顔も悲惨な状態に陥り、結局、最強のステロイド剤を朝に一挙3錠服用して、ほぼ一週間程度で7割方痒みは沈静化したのですが、その間の、腕を切り落としたくなるような衝動と戦いながらひたすら耐える日々は本当に辛いものでした。

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この投稿文では、森林内での多くの危険に対して注意を喚起した後、最後を「・・・・自分の不注意さ愚かさには呆れるばかり、ウルシも笑っていることだろう。因みにウルシの花言葉は「賢明」である。」と締めて、ナイスなエンドだなあ~と悦に入っていたのですが、それから一年と経たずして、今や危険生物ランキングを急上昇中の「マダニ」様からありがたくない贈り物をいただくことになるとは夢にも思ってはいませんでした。

■初夏~カラマツの新葉と戯れる!?
初めてマダニに食い付かれたのも20年ほど前のことです。この時は背中でしたが、幸いなことに偶然に妻が見つけて引っ張り出したのです。今でも痕跡は明確に残っていますが、その後何事もありませんでした。
当時、ダニ由来の感染症といえばせいぜい「ライム病」くらいしか思い浮かばず、ダニによる咬傷も、蚊やアブのそれと同じようなもの、スズメバチやヒグマの危険性とは比較にすらならない低い意識でした。とはいえ、それ以来「ウルシ」同様に山では細心の注意は払ってきたのですが・・・・・・・。
季節が一月進んだような陽気に見舞われた今年5月末のことです。この日、ある調査のため、高さ3~4mほどのカラマツの若い林に分け入りました。
マダニが媒介するウィルス性脳炎で、すでに2人の道民が亡くなっていることは承知していたのでナイロン製の上下にゴム長靴、ゴム手袋を装着しました。これでウルシやイラクサにも心配はありません。ただ、頭部全体を覆うことなく、首に白いタオルを巻き付け頭にはヘルメットを着用しました。草丈はまだ低くせいぜい腹部くらいですが、カラマツの新葉は緑も初々しく、まるで幼児の頭髪かはたまた可憐な乙女の指のような柔らかさで、顔に当たると何ともいえない心地よさです。こうして妙に爽やかな(?)余韻を残して、山林を後にしたのでした。

■ついに「マダニ」の進入を許す!
その夜、浴室で左腹部に食らいついたマダニを発見してびっくり仰天。カラマツの新葉に付いていたものが首から進入したに違いありません。「可憐な乙女の指のような」などと浮かれていた自分がアホのようです。山林から出た後、直ちにタオルを取ってしっかり確認さえしておけばよかったものを・・・もう後のまつりでした。
このような場合、「無理に引き抜かず病院へ」が鉄則です。しかしこれから夜間受診する気にもならず、結局、皮膚に突っ込んでいた頭部(口器)を残さぬようゆっくりと引き抜きました。完全に除去できたか否かは今だ判然としはいませんが。これが一昔前のことならさほど気にも留めなかったのですが、前述したように「マダニ」媒介の危険な感染症は昨今のマスコミでたびたび話題になっていることもあり、一抹の不安を感じました。それでも、「感染症なら病原体はもう体内だよなー」と妙に開き直って、とりあえず傷口の化膿防止のため手元にあった抗生剤軟膏をたっぷり塗りつけて床に入りました。

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自分で除去した翌日の患部(平成30年5月)

その後、患部は少し化膿したような気もするのですが(写真)、病院にも行かず、翌々日には娘に会うため夫婦で上京するなど何事もなく日々を送りました。
そして咬傷からちょうど2週間後の日曜日、札幌の自宅に戻っていた時のことです。明らかにいつもと異なる感じ、軽い異変を覚えたのです。それまで私の体の中でひっそりと息を潜めていた”奴”がついに動きだしたのです。今思うと間違いありません。(つづく)

◆日高振興局森林室平取事務所  種市 利彦

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