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旅は木育 世は情け(1/3回)荒浪越えて編 -  2019.02.20 Wed

私たち夫婦が勤め人を辞めて自由の身になってから、早いものでもう、4年近くになる。
その間、旅に要した日数は延べ60日を超える。
そもそも、職場との性格の不一致で退職した私に、「いいな、オレも退職したいな」という夫のお願いを即了したのは、私の大好きな旅に連れていって貰おうという企みがあってのことだった。
お願いをきいて貰った弱みからか、双方の利害が一致をみた結果なのか、かくして『辞めちゃった夫婦』は、車に寝袋やら削り馬やら一切合切詰め込んで、舞鶴行きのフェリーに乗り込んだ。
冬のフェリーは海が荒れるため、観光客に忌避されているらしい。トラック運送の運転手がわずかに乗っているだけ。シーズンには催されていた船上コンサートもなく、波に遊ぶカモメにカメラを向ける人も居ず、ただただ灰色の海原が広がっている。

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しけのためにまず、オープンデッキが閉鎖になり、まもなく浴場が使用できなくなって、とうとうレストランもクローズした。辛うじて開いていた売店で弁当を買い、ラウンジスペースで昼食を摂る。しかしそれさえもが大変だった。自分たちの寝台がある船室からラウンジまでの、さほど遠くない距離を歩くのが困難だったのだ。大きなうねりを受けて、まず右側の壁にぶつかり、少し行くと今度は左の壁に振られる。
「歩きにくいよ」と私が泣き言をいうと夫は考え込んでから、「地面に足をついている時間が長すぎるんだよ。もっと早く歩けば…。それよりスキップしたらいいんじゃない? 空中に浮いている時間が長くなるから」
そこで私たちは揺れる船の廊下で二人してスキップをした。
結果はそう、あなたが思っている通り…事態を悪化させただけだった。閑散とした船内に人目がなかったのがせめてもであろう。

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そのほかにも数々のくだらない困難が私を待ち受けていた。
『木育の旅』と宣言して、「これは観光旅行じゃないから、観光名所には行かないよ」と言う夫に対し時々、
「せめてこれだけは見せて作戦」を敢行し、森や林から夫を無理やり引きはがし、夫の大きらいな人混み観光に身を投じたり、ハゼの木にかぶれて顔の半分をお岩のように腫らして見知らぬ町のお医者にかかったりもした。広島では広島弁全開の白バイ警官に一通違反を注意され、違反キップを切られるかと思ったが、はるばる遠い札幌ナンバーに免じて、「こんどだけは見逃してやるけん」と、往年の宍戸錠のように二本指を振って去って行く後ろ姿を感謝で見送ったのも今となってはいい思い出だ。
夫はいたって呑気かと思うとそうでもなく、大好きなはずの雑木林で顔色を失くし、梢を見上げたり、足元の落ち葉を拾い上げたりしながら、何やらブツブツつぶやいている。「ごめんなさい、ごめんなさい、ゆるしてください」
「どうしたの?」と聞けば、木の種類が見慣れた北海道のものと違い過ぎて分からないのだという。自分を取り巻いている木がどんなものか分からないので、気持ち悪くて仕方ないらしい。

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私たちの住む北海道に自生する木は30種類ほど覚えていればそれなり当てはめられそうだが、それとは比べようもない程沢山の種類の木が自生している。
哀れな夫には旅先のツタヤでポケット版の樹木図鑑を買い与えて、「これをココロが乱れたときの、お守りにしなさいね」となだめておいた。
 
話が長くなったので今回はこれまで。
お話しが、まだぜんぜん木育らしくなっていませんが、大丈夫。次回からはちゃんと(少しは)木育らしい話題もでてきます。(の、予定)


◆ようてい木育倶楽部/木育マイスター 斎藤 香里

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