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冬のコートを脱ぎ捨てて(1/2回) -  2019.05.15 Wed

長かった冬がやっと幕を閉じ、人々は春の装いへと変化してきました。しかし、この時期は、「花冷え」、「リラ冷え」と呼ばれる寒い日もあり、タンスにしまい込んだ冬服を思わず取り出してしまうこともあります。
着込むことで寒さを凌ぐ。人間はその時々において気温の変化に対応していきますね。

一方、樹木はどうでしょう。
多くの樹木は毎年同じようなことを繰り返しながら成長しますが、冬に入る前に芽は伸長せず、翌年の準備をし休眠するという堅実な戦略をとります。この戦略は冬芽と呼ばれ、冬芽には翌年伸びる茎や葉がいっぱい詰まっています。そして、冬芽は芽鱗(がりん)というものに覆われ、寒さや乾燥から守られています。言わば冬のコートのようなものですね。
芽鱗の数は樹木によって違う。サラッとコートを羽織ったりするもの、これでもかというぐらい着込んだり、樹木ごとの戦略を見るだけでも楽しめます。人間は寒くなってから重ね着したりするのに、樹木って何故季節を把握しながら対応できるのか、その不思議さには驚かされます。

【キタコブシ】冬芽
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遠くに見る山々の移り変わり、そして間近で感じられること、さらにお花見で楽しむ。春の感じた方は人それぞれですが、自分の春の感じ方はダイナミズム。そんな春の感じ方を紹介いたします。

日が長くなり、太陽の位置も高さを増し、森の中は陽射しがたっぷりと注ぎ込まれ、いよいよ樹木たちはお目覚め開始。樹木は一斉に目覚めるのではなく、何故かタイムラグがあるのも不思議です。冬芽が膨らみ出し、冬のコートを脱ぎ捨てながら、閉じ込められていた葉っぱや花が開く。芽吹きは樹木によって全く違いますね。急いで葉を開くもの、先に花が咲くもの、花と葉を同時に開くもの、樹木の戦略は様々です。多種多様な森だからこそ楽しめることは多いかもしれません。
それでは、名優たちの演出を楽しんでください。

【シウリザクラ】
これを見ないと春が来たという気がしない、最も好きなのはシウリザクラ。まだ、森の中で寝ている樹木が多い中、この樹木のお目覚めは早い。まるで、俳優のように自己表現をしながらのひとり舞台。演出も派手ですね。赤みを帯びた葉っぱが開き出し、オレンジ色へと変化し淡い緑色へと変わる。芽鱗は花弁のようにも見え、変幻自在の演出はお客さんを魅了しますね。

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【ホオノキ】
元気の良さでは負けず劣らずの樹木。ホオノキの開葉も見ごたえがありますね。一際大きなコートを脱ぎ捨てて開葉する姿は何とも勇ましい。

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その一方で、うなだれ気味で開葉するものもある。葉っぱの形も影響しているのかもしれませんが、カエデ類の葉の出始めは「もうちょっと元気を出して!春なんだから」と声を掛けたくなりますね。

【イタヤカエデ】
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【ハウチワカエデ】
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【ヤマモミジ】
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他にもうなだれて開葉する樹木たち。
 
【ミズナラ】
うなだれの代表格はミズナラでしょう。茎の部分に押し上げられ、嫌々出ているようにも見えますね。

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【ハリギリ】
ゆくゆくは巨大化するハリギリの始まりは控えめ。

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次回に、続きます。


◆ようてい木育倶楽部 齊藤 文美

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