木のネズミ - 2020.01.10 Fri
KEMさんの木育生活01
北海道の木育のテーマ「木とふれあい、木に学び、木と生きる」は、私たちが日々の暮らしや営みの中で木や森をどのように考え、行動するかを大切にしています。私自身が木育の普及活動をすすめながら、木工デザインの仕事を通して生活の中で感じたり考えたりしたことを『KEMさんの木育生活』として連載したいと思います。タイトルの「KEMさん」は、私(煙山泰子)のニックネームです。よろしくお付合いください。
第1回は、新年の干支にちなんで木製のネズミを紹介します。

自作の「木ネズミ」
KEM工房の資料室には、木の動物が多数あります。私が最初に出会った干支の木彫は、小さな杉箱に納まってミニお札と説明文が付いていました。蓋には墨で年号と「神宮えと守」の文字に朱印が押され、木彫にも「神宮」の丸い焼印がついています。説明書には「これは・・・神域の楠(クス)材をもって 神宮彫刻師が謹刻して 和平安穏、多幸多祥の祈祷をこめたものであります」とあります。
どこか有名な「○○神宮」の干支彫りなのだろうと思い所在を調べたのですが、その時は判りませんでした。
数年後、はじめて伊勢神宮に行くことになりホームページを検索していたら、ここの正式名称は「神宮」で、毎年正月に干支守りを授与しているとのこと。

左より、昭和35年、47年、59年、平成8年の干支守

伊勢一刀彫りは、いにしえより20年ごとに行われる伊勢神宮の式年遷宮の造営に携わる宮大工の余技としてはじめられたもので、檜(ヒノキ)や楠(クス)の直方体をノミや彫刻刀で荒彫りしたもので、干支守りの授与は昭和24年(1949)丑歳より始まったそうです。
干支は古代中国で生まれた陰陽五行説が基になっています。自然界のすべてのものは「陰」と「陽」の相対するもので補い合って存在し、それは五つの要素(五行)「木・火・土・金・水」で成り立っているというもの。このような宇宙観や自然観によって考え出されたのが「十干」(じゅっかん)と「十二支」(じゅうにし)です。
◎「十干」甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、己(つちのと)、戊(つちのえ)、辛(かのと)、庚(かのえ)、癸(みずのと)、壬(みずのえ)
◎「十二支」子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥
この「十干」と「十二支」を順番に組み合わせたものが、その年の干支になります。同じ干支は60年ごとにめぐってきますから、自分の生まれた干支が二度目にくるのが還暦になります。一年を通じて日常生活に、さまざまな宗教的行事や慣習が共存していることが、現代的な日本文化の姿でしょう。そして良くも悪くも、これが今の時代の「日本らしさ」なのかもしれません。
ここからは、歴代の神宮ネズミや仲間達を紹介しましょう。

昭和35年(庚子)のネズミはヒノキ材で綺麗な削り目の写実的表現。次の昭和47年(壬子)からはクスノキ材です。荒い面取りでネズミが立ち上がった姿でしょう。

昭和59年(甲子)は、おとなしい印象で、平成8年(丙子)はモダンで元気なネズミに見えます。平成のものは、箱を開けるとまだクスノキの爽やかな香りが残っています。クスノキは樟脳(しょうのう)の原料です。北海道には生育しませんが、九州に行ったときには各地にクスの巨木がたくさん観られました。
伊勢のものは、昔から現代のものまで、のし紙や箱と紐、お札、説明文にまで金属釘やテープ、ビニール紐などが一切使われていないことに好感がもてます。

シッポの長い「コロ・ネズミ」と昭和59年の年賀状に入れた「コルク・ネズミ」

ヨーロッパのおもちゃ、赤いネズミのマグネット
令和2年、今年の干支は「庚子」(かのえ・ね)です。ネズミは、その繁殖力にちなみ「子孫繁栄」の象徴ともされています。
どうぞ良い年になりますように!
◆ KEM工房/木育ファミリー顧問 煙山 泰子
北海道の木育のテーマ「木とふれあい、木に学び、木と生きる」は、私たちが日々の暮らしや営みの中で木や森をどのように考え、行動するかを大切にしています。私自身が木育の普及活動をすすめながら、木工デザインの仕事を通して生活の中で感じたり考えたりしたことを『KEMさんの木育生活』として連載したいと思います。タイトルの「KEMさん」は、私(煙山泰子)のニックネームです。よろしくお付合いください。
第1回は、新年の干支にちなんで木製のネズミを紹介します。

自作の「木ネズミ」
KEM工房の資料室には、木の動物が多数あります。私が最初に出会った干支の木彫は、小さな杉箱に納まってミニお札と説明文が付いていました。蓋には墨で年号と「神宮えと守」の文字に朱印が押され、木彫にも「神宮」の丸い焼印がついています。説明書には「これは・・・神域の楠(クス)材をもって 神宮彫刻師が謹刻して 和平安穏、多幸多祥の祈祷をこめたものであります」とあります。
どこか有名な「○○神宮」の干支彫りなのだろうと思い所在を調べたのですが、その時は判りませんでした。
数年後、はじめて伊勢神宮に行くことになりホームページを検索していたら、ここの正式名称は「神宮」で、毎年正月に干支守りを授与しているとのこと。

左より、昭和35年、47年、59年、平成8年の干支守

伊勢一刀彫りは、いにしえより20年ごとに行われる伊勢神宮の式年遷宮の造営に携わる宮大工の余技としてはじめられたもので、檜(ヒノキ)や楠(クス)の直方体をノミや彫刻刀で荒彫りしたもので、干支守りの授与は昭和24年(1949)丑歳より始まったそうです。
干支は古代中国で生まれた陰陽五行説が基になっています。自然界のすべてのものは「陰」と「陽」の相対するもので補い合って存在し、それは五つの要素(五行)「木・火・土・金・水」で成り立っているというもの。このような宇宙観や自然観によって考え出されたのが「十干」(じゅっかん)と「十二支」(じゅうにし)です。
◎「十干」甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、己(つちのと)、戊(つちのえ)、辛(かのと)、庚(かのえ)、癸(みずのと)、壬(みずのえ)
◎「十二支」子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥
この「十干」と「十二支」を順番に組み合わせたものが、その年の干支になります。同じ干支は60年ごとにめぐってきますから、自分の生まれた干支が二度目にくるのが還暦になります。一年を通じて日常生活に、さまざまな宗教的行事や慣習が共存していることが、現代的な日本文化の姿でしょう。そして良くも悪くも、これが今の時代の「日本らしさ」なのかもしれません。
ここからは、歴代の神宮ネズミや仲間達を紹介しましょう。

昭和35年(庚子)のネズミはヒノキ材で綺麗な削り目の写実的表現。次の昭和47年(壬子)からはクスノキ材です。荒い面取りでネズミが立ち上がった姿でしょう。

昭和59年(甲子)は、おとなしい印象で、平成8年(丙子)はモダンで元気なネズミに見えます。平成のものは、箱を開けるとまだクスノキの爽やかな香りが残っています。クスノキは樟脳(しょうのう)の原料です。北海道には生育しませんが、九州に行ったときには各地にクスの巨木がたくさん観られました。
伊勢のものは、昔から現代のものまで、のし紙や箱と紐、お札、説明文にまで金属釘やテープ、ビニール紐などが一切使われていないことに好感がもてます。

シッポの長い「コロ・ネズミ」と昭和59年の年賀状に入れた「コルク・ネズミ」

ヨーロッパのおもちゃ、赤いネズミのマグネット
令和2年、今年の干支は「庚子」(かのえ・ね)です。ネズミは、その繁殖力にちなみ「子孫繁栄」の象徴ともされています。
どうぞ良い年になりますように!
◆ KEM工房/木育ファミリー顧問 煙山 泰子