木育の種、咲かせた花~第3回 積丹発大人の木育としての「クラフトジン」 - 2023.04.16 Sun
私が木育という言葉に出会ったのは、平成16年に道内建設コンサルタント会社から北海道庁知事政策部に出向した際のこと。当時、知事政策部が庁内に募集した協働政策に水産林務部から「木育」の趣旨が提案されたのが始まりです。
当時、「木育」と言っても、「食育」のようにわかりやすい理解を得るため、窓口担当として、水産林務部や各方面の専門家とともに、その概念や取組範囲について議論を重ね、「木育」の原型を作り上げたのが良い思い出です。
そのころ、道内の木工家による「木のおもちゃ」や、東川町で始まった「君の椅子」、森を学ぶプログラムなどが私にとってわかりやすい木育でしたが、もっと日常的で収益にもつながるものがないものか、といろいろ思いを巡らせていたことを思い出します。
時は経ち、2015年(平成27年)、平成19年に独立開業した農林水産業のコンサルタント会社、(株)GB産業化設計で、積丹町の遊休施設や耕作放棄地の有効活用を促進する冊子づくり(プロジェクトブック)の仕事を請け負い、調査を進めていたところ、ヒントを得ようと訪れた「木のおもちゃ」の第一人者であり、木育の生みの親の一人でもあるKEM工房主宰の煙山泰子さんから、スコットランド「BLACK WOODS蒸溜所」と「ジン」の存在を紹介され、風も強く、寒冷な気候の積丹に合っているのではないか?とのアイデアをいただきました。

積丹町では、内閣府が主導する「地方創生事業」の提案機会にプロジェクトを提案するタイミングにあり、役場の皆さんや、煙山さん、それに植生のプロなどを加えたプロジェクトチームでつくった提案内容が通り、町長、副町長、課長さんたちの満場一致をもって、「地域の植生を活用したスピリッツ開発事業」がスタートを切ることになりました。
そもそも、「ジン」というお酒は、ヒノキ科の球果であるジュニパーベリーを主原料として、37.5度以上の蒸留酒という定義があり、イギリスやドイツを中心に世界各地で日常的に飲まれるお酒ですが、とても面白いと思ったのは、地域の特産的なボタニカルフレーバーを加えてオリジナリティを表現していることでした。日本でも私たちが検討を開始した2016年に「京都蒸溜所」が「季の美」というブランドでジン専門蒸溜所を開設するなど、日本における「ジン」ブームがここから始まっています。
「積丹ジンプロジェクト」は京都に後れをとったものの、耕作放棄地を耕し自らがハーブや香りのする樹木を植えるなど、原料生産から立ち上げる路線をたどる一方、2016年の冬にスコットランド、イギリスを訪ね、ロンドン中心部にあるシティオブロンドン蒸溜所にで、ジンのレシピのヒントを得て、2017年、広島にある酒類総合研究所との共同研究(試験蒸溜)を経て、独自のレシピの原型を確立しました。

積丹ジンの最大の特徴は、ボタニカルの香りを最大限に引き出すため、自社生産・採取したハーブや樹木の実や枝、葉などを原料化し、植物毎に別々の蒸溜を行い、ジンのベースとブレンドして作り上げる方法にあり、この方法により、関心を持っていただける多くの皆様に参加いただきながらオリジナルのジンを作り上げるプロセスが可能となりました。
煙山さんも私も、木育創生期からその理念を話し合ってきた仲間であり、双方に考えていた蒸溜の形は、すなわち木育の形であったということになります。
ジンは香りのお酒、積丹半島や北海道に自生するボタニカルに着目し、その自然の恵みからヒントを得た蒸溜酒は、植生や木育、お酒の専門家により立ち上げられる道をたどり、原料生産から原料化、蒸溜、ブレンドをすべて自社に内製化した世界でも珍しい蒸溜所となりました。
この取組も評価され、2022年、初出品した東京ウイスキー&スピリッツコンペティションにおいて、日本の数ある銘柄での中で金賞受賞(全体の5位の評価)を得て、その存在が国内、世界に知られるところとなりました。


私たちは、積丹半島の自然に生かされながらジンという香りのお酒づくりを営む会社です。
これこそ私がイメージしてきた、自然とたわむれる大人の木育の世界。
この世界に磨きをかけ、積丹半島に、そして北海道に、世界からたくさんの人たちが遊びに来て「木育」(MOKUIKU)が世界に広がることを願っています。
北海道からはじまった日本の「木育」を、ジンを飲んで世界の「MOKUIKU」として広げていきましょう!
◆(株)GB産業化設計/(株)積丹スピリット 代表取締役 岩井宏文
当時、「木育」と言っても、「食育」のようにわかりやすい理解を得るため、窓口担当として、水産林務部や各方面の専門家とともに、その概念や取組範囲について議論を重ね、「木育」の原型を作り上げたのが良い思い出です。
そのころ、道内の木工家による「木のおもちゃ」や、東川町で始まった「君の椅子」、森を学ぶプログラムなどが私にとってわかりやすい木育でしたが、もっと日常的で収益にもつながるものがないものか、といろいろ思いを巡らせていたことを思い出します。
時は経ち、2015年(平成27年)、平成19年に独立開業した農林水産業のコンサルタント会社、(株)GB産業化設計で、積丹町の遊休施設や耕作放棄地の有効活用を促進する冊子づくり(プロジェクトブック)の仕事を請け負い、調査を進めていたところ、ヒントを得ようと訪れた「木のおもちゃ」の第一人者であり、木育の生みの親の一人でもあるKEM工房主宰の煙山泰子さんから、スコットランド「BLACK WOODS蒸溜所」と「ジン」の存在を紹介され、風も強く、寒冷な気候の積丹に合っているのではないか?とのアイデアをいただきました。

積丹町では、内閣府が主導する「地方創生事業」の提案機会にプロジェクトを提案するタイミングにあり、役場の皆さんや、煙山さん、それに植生のプロなどを加えたプロジェクトチームでつくった提案内容が通り、町長、副町長、課長さんたちの満場一致をもって、「地域の植生を活用したスピリッツ開発事業」がスタートを切ることになりました。
そもそも、「ジン」というお酒は、ヒノキ科の球果であるジュニパーベリーを主原料として、37.5度以上の蒸留酒という定義があり、イギリスやドイツを中心に世界各地で日常的に飲まれるお酒ですが、とても面白いと思ったのは、地域の特産的なボタニカルフレーバーを加えてオリジナリティを表現していることでした。日本でも私たちが検討を開始した2016年に「京都蒸溜所」が「季の美」というブランドでジン専門蒸溜所を開設するなど、日本における「ジン」ブームがここから始まっています。
「積丹ジンプロジェクト」は京都に後れをとったものの、耕作放棄地を耕し自らがハーブや香りのする樹木を植えるなど、原料生産から立ち上げる路線をたどる一方、2016年の冬にスコットランド、イギリスを訪ね、ロンドン中心部にあるシティオブロンドン蒸溜所にで、ジンのレシピのヒントを得て、2017年、広島にある酒類総合研究所との共同研究(試験蒸溜)を経て、独自のレシピの原型を確立しました。

積丹ジンの最大の特徴は、ボタニカルの香りを最大限に引き出すため、自社生産・採取したハーブや樹木の実や枝、葉などを原料化し、植物毎に別々の蒸溜を行い、ジンのベースとブレンドして作り上げる方法にあり、この方法により、関心を持っていただける多くの皆様に参加いただきながらオリジナルのジンを作り上げるプロセスが可能となりました。
煙山さんも私も、木育創生期からその理念を話し合ってきた仲間であり、双方に考えていた蒸溜の形は、すなわち木育の形であったということになります。
ジンは香りのお酒、積丹半島や北海道に自生するボタニカルに着目し、その自然の恵みからヒントを得た蒸溜酒は、植生や木育、お酒の専門家により立ち上げられる道をたどり、原料生産から原料化、蒸溜、ブレンドをすべて自社に内製化した世界でも珍しい蒸溜所となりました。
この取組も評価され、2022年、初出品した東京ウイスキー&スピリッツコンペティションにおいて、日本の数ある銘柄での中で金賞受賞(全体の5位の評価)を得て、その存在が国内、世界に知られるところとなりました。


私たちは、積丹半島の自然に生かされながらジンという香りのお酒づくりを営む会社です。
これこそ私がイメージしてきた、自然とたわむれる大人の木育の世界。
この世界に磨きをかけ、積丹半島に、そして北海道に、世界からたくさんの人たちが遊びに来て「木育」(MOKUIKU)が世界に広がることを願っています。
北海道からはじまった日本の「木育」を、ジンを飲んで世界の「MOKUIKU」として広げていきましょう!
◆(株)GB産業化設計/(株)積丹スピリット 代表取締役 岩井宏文
大人の木育講座 第3回 報告 - 2023.03.13 Mon
3月2日(木)、札幌エルプラザ中研修室にて西川栄明さんの企画による「第3回大人の木育講座」を開催しました。

講師の斎藤直人さん(北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹)は、現在、ミズナラをはじめとする道産材を用いたウイスキー樽の研究に携わっておられます。
講演のテーマは、「なぜ、ウイスキー樽の素材にミズナラが使われるのか~林産試験場の研究者が、ウイスキー樽の不思議をわかりやすく解説~」です。
今回の参加者は、木工や木材関係を中心に幅広い分野より定員50名近くにお集まりいただきました。木材の専門知識にたいする関心の高さでしょうか、連続参加のかたも多いようでした。

ミズナラ材の樽で熟成されたウイスキーは、繊細で複雑な香りや味わいを醸し出すといわれています。
斎藤さんのお話しは「木材の研究者が解説するウイスキー樽の不思議」と題して、北海道の森林資源にはじまり、次に木材の性状についての基礎的知識からウイスキー樽の機能へとすすみます。

斎藤さんのスライド資料より

同じナラ材の樽でも、アメリカのバーボン・ウイスキーに使われるホワイトオークと、イギリスのミズナラでは、道管の大きさと成分が違うので熟成する際の条件が変わることなど。木材の成分や性質などを研究してきた化学者の視点から、樽の内部で起こっているウイスキーの熟成(機能・作用)について説明がありました。


次に各種の香り成分については、研究の成果品である18種類の香り成分を付箋紙に浸けて、各自に渡してくださいました。よく嗅いだことのあるトドマツやラベンダーにはじまり、木材由来の香り、煙由来の香り、発酵・貯蔵由来の香りと続き、ミズナラ、サクラ、カラマツなど新たな樽材の可能性まで・・・各自が調香師のように次々と体験しました。
最後には、ジャパニーズ・ウイスキーを国産ミズナラ樽で作ることの現状について。
・樽用ミズナラには樹齢150〜200年(末口40センチ以上)の原木が必要
・パルプ用材でも良いが、歩止まりは悪い(20%以下)
・ミズナラ樽の需要は高いものの、唯一の国内工場でも年間数十樽の制作
・大手メーカーは自社で樽加工できるが、地域の蒸溜所には技術職人が不在で補修困難
・樽作りには、施設と設備が必要
これらの点で、なかなか道は険しいと感じました。しかし北海道のミズナラ樽を使ったウイスキーは貯蔵30年を過ぎると、メロンやチョコレートのようなとても良い香り(酢酸フェネチルエチル)が出るそうです。
お酒は飲めませんでしたが、たくさんの香りに包まれた夢見心地の講座でした。

これで、連続3回の「大人の木育講座」が無事終了しました。厳寒期にもかかわらず、道内各地から皆さんご参加いただきありがとうございました。各講師の方々にも貴重な機会をつくっていただいたことに感謝しています。

講師の斎藤直人さん(北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹)は、現在、ミズナラをはじめとする道産材を用いたウイスキー樽の研究に携わっておられます。
講演のテーマは、「なぜ、ウイスキー樽の素材にミズナラが使われるのか~林産試験場の研究者が、ウイスキー樽の不思議をわかりやすく解説~」です。
今回の参加者は、木工や木材関係を中心に幅広い分野より定員50名近くにお集まりいただきました。木材の専門知識にたいする関心の高さでしょうか、連続参加のかたも多いようでした。

ミズナラ材の樽で熟成されたウイスキーは、繊細で複雑な香りや味わいを醸し出すといわれています。
斎藤さんのお話しは「木材の研究者が解説するウイスキー樽の不思議」と題して、北海道の森林資源にはじまり、次に木材の性状についての基礎的知識からウイスキー樽の機能へとすすみます。

斎藤さんのスライド資料より

同じナラ材の樽でも、アメリカのバーボン・ウイスキーに使われるホワイトオークと、イギリスのミズナラでは、道管の大きさと成分が違うので熟成する際の条件が変わることなど。木材の成分や性質などを研究してきた化学者の視点から、樽の内部で起こっているウイスキーの熟成(機能・作用)について説明がありました。


次に各種の香り成分については、研究の成果品である18種類の香り成分を付箋紙に浸けて、各自に渡してくださいました。よく嗅いだことのあるトドマツやラベンダーにはじまり、木材由来の香り、煙由来の香り、発酵・貯蔵由来の香りと続き、ミズナラ、サクラ、カラマツなど新たな樽材の可能性まで・・・各自が調香師のように次々と体験しました。
最後には、ジャパニーズ・ウイスキーを国産ミズナラ樽で作ることの現状について。
・樽用ミズナラには樹齢150〜200年(末口40センチ以上)の原木が必要
・パルプ用材でも良いが、歩止まりは悪い(20%以下)
・ミズナラ樽の需要は高いものの、唯一の国内工場でも年間数十樽の制作
・大手メーカーは自社で樽加工できるが、地域の蒸溜所には技術職人が不在で補修困難
・樽作りには、施設と設備が必要
これらの点で、なかなか道は険しいと感じました。しかし北海道のミズナラ樽を使ったウイスキーは貯蔵30年を過ぎると、メロンやチョコレートのようなとても良い香り(酢酸フェネチルエチル)が出るそうです。
お酒は飲めませんでしたが、たくさんの香りに包まれた夢見心地の講座でした。

これで、連続3回の「大人の木育講座」が無事終了しました。厳寒期にもかかわらず、道内各地から皆さんご参加いただきありがとうございました。各講師の方々にも貴重な機会をつくっていただいたことに感謝しています。
木育の種、咲かせた花~第2回 木育どうでしょう - 2023.02.14 Tue
木育の取組の展開方法として「メディアやタレントの有効活用」がある。皆様も経験がないだろうか。企画そのものに興味がなかったとしても、好きなタレントが出ていたら見てしまう。その結果、面白ければ企画も印象に残る。
木育が生まれた当初、木と疎遠になりがちな子どもたちに、どうやって木に触れる機会を増やせるかを課題としていた。子どもが小さいうちから木や森に触れる原体験を増やすためには、その親となる世代に、木育が楽しそうなものだ、子どもと一緒に参加してみたいと思わせるアピールが必要だ。それには、これから結婚して子育てするだろう世代、20~30代に人気のあるタレントを活用し、メディアで木育を楽しく取り上げてもらうのが有効な手段ではないだろうか。
こんなことを、今から十数年前にお酒の入った夜の席で熱弁している若者を、他のメンバーは笑って聞いて、こう言った。「木育どうでしょうだね」
その後、酔いがさめても熱が冷めない一人のメンバーは、某テレビ局あてに分厚いファンレターを送ることとなる。木育という新しい取組を始めること。木育を広くかつ楽しく認知してもらうために、日常で使っている木製品が、森でどのように育って、切り出されて、加工されていくかを、テレビの企画としてタレントに体験してもらうことによって、視聴者に面白く届けられないか。例えば、タレントが料理をふるまいたいだけなのに、木を伐りだして箸や机、椅子、家を作らないと料理が作らせてもらえない、みたいな企画を。こんな手紙と木育のPR冊子を一方的に送り、送っただけで満足していたものと思う。
驚くべきことに、このファンレターに当時の番組プロデューサーから返事が来た。折しも、番組発信のお祭りが開催されようとしていた時期だった。プロデューサーは木球プールが映った冊子を目に留めてくれたようで、「番組のイベントに来てくれる人たちは、番組のことが好きで来てくれるからよいが、子ども連れで参加してくれた場合、子どもが退屈するのはかわいそうだ。託児スペースを作るので木球プールを置かせてもらえないか」という相談だった。当時、どうにか木球プールを貸し出せないかとがんばってみたが、民間企業のイベントにレンタルする体制が整えられず、泣く泣くお断りすることとなった。
今なら、木球プールをはじめ木製遊具をレンタルできる仕組みが選べるようになった。あの頃は実現できなかったけれど、時期と環境が整っていれば、イベントでの木球プール設置は実現できたかもしれないなと思う。
木製遊具をめぐる状況だけではなく、年月が経って、いろんなことが変わった。数十年前に話題にあげていた北海道ゆかりのタレントたちは北海道にとどまらず躍進を続け、今や誰かしら全国ネットに出ている活躍ぶりだ。
タレント事務所の社長改め会長は、北海道赤平市の森林所有者となり、自身の山でツリーハウスを作る企画がテレビ画面を通してお茶の間に届けられることとなった。2019年に開催された「国民参加の森林づくりシンポジウム」では、鈴井貴之氏が登壇し、森づくりをテーマにたっぷり語ってくれた。

2021年に北海道で行われた第44回全国育樹祭では、森崎博之氏がナビゲーターとなり「これからも木育を進めていきましょう!」と叫んでいた。

メディアの有効活用を訴えていた、北海道ゆかりタレントのファンの小さなアイデアの種は確かに花を咲かせたのだ。一通のファンレターが、もしかすると何かや誰かを動かして、年月を経て企画が実現するかもしれない。
今後も、木育がメディアを通して新しい誰かの目に留まり、次世代が木育に関わるきっかけになるよう期待をしていきたい。
◆北海道水産林務部森林計画課 根井三貴
木育が生まれた当初、木と疎遠になりがちな子どもたちに、どうやって木に触れる機会を増やせるかを課題としていた。子どもが小さいうちから木や森に触れる原体験を増やすためには、その親となる世代に、木育が楽しそうなものだ、子どもと一緒に参加してみたいと思わせるアピールが必要だ。それには、これから結婚して子育てするだろう世代、20~30代に人気のあるタレントを活用し、メディアで木育を楽しく取り上げてもらうのが有効な手段ではないだろうか。
こんなことを、今から十数年前にお酒の入った夜の席で熱弁している若者を、他のメンバーは笑って聞いて、こう言った。「木育どうでしょうだね」
その後、酔いがさめても熱が冷めない一人のメンバーは、某テレビ局あてに分厚いファンレターを送ることとなる。木育という新しい取組を始めること。木育を広くかつ楽しく認知してもらうために、日常で使っている木製品が、森でどのように育って、切り出されて、加工されていくかを、テレビの企画としてタレントに体験してもらうことによって、視聴者に面白く届けられないか。例えば、タレントが料理をふるまいたいだけなのに、木を伐りだして箸や机、椅子、家を作らないと料理が作らせてもらえない、みたいな企画を。こんな手紙と木育のPR冊子を一方的に送り、送っただけで満足していたものと思う。
驚くべきことに、このファンレターに当時の番組プロデューサーから返事が来た。折しも、番組発信のお祭りが開催されようとしていた時期だった。プロデューサーは木球プールが映った冊子を目に留めてくれたようで、「番組のイベントに来てくれる人たちは、番組のことが好きで来てくれるからよいが、子ども連れで参加してくれた場合、子どもが退屈するのはかわいそうだ。託児スペースを作るので木球プールを置かせてもらえないか」という相談だった。当時、どうにか木球プールを貸し出せないかとがんばってみたが、民間企業のイベントにレンタルする体制が整えられず、泣く泣くお断りすることとなった。
今なら、木球プールをはじめ木製遊具をレンタルできる仕組みが選べるようになった。あの頃は実現できなかったけれど、時期と環境が整っていれば、イベントでの木球プール設置は実現できたかもしれないなと思う。
木製遊具をめぐる状況だけではなく、年月が経って、いろんなことが変わった。数十年前に話題にあげていた北海道ゆかりのタレントたちは北海道にとどまらず躍進を続け、今や誰かしら全国ネットに出ている活躍ぶりだ。
タレント事務所の社長改め会長は、北海道赤平市の森林所有者となり、自身の山でツリーハウスを作る企画がテレビ画面を通してお茶の間に届けられることとなった。2019年に開催された「国民参加の森林づくりシンポジウム」では、鈴井貴之氏が登壇し、森づくりをテーマにたっぷり語ってくれた。

2021年に北海道で行われた第44回全国育樹祭では、森崎博之氏がナビゲーターとなり「これからも木育を進めていきましょう!」と叫んでいた。

メディアの有効活用を訴えていた、北海道ゆかりタレントのファンの小さなアイデアの種は確かに花を咲かせたのだ。一通のファンレターが、もしかすると何かや誰かを動かして、年月を経て企画が実現するかもしれない。
今後も、木育がメディアを通して新しい誰かの目に留まり、次世代が木育に関わるきっかけになるよう期待をしていきたい。
◆北海道水産林務部森林計画課 根井三貴
大人の木育講座 第3回 開催のお知らせ - 2023.01.31 Tue
◆大人の木育講座 第3回
テーマ:なぜ、ウイスキー樽の素材にミズナラが使われるのか。
~林産試験場の研究者が、ウイスキー樽の不思議をわかりやすく解説~
〇講師:斎藤直人(北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹)
〇開催日時:2023年3月2日(木)19:00~20:50
〇会場:札幌エルプラザ4階 中研修室
札幌市北区北8条西3丁目(JR札幌駅北口より徒歩3分)
講師の斎藤直人さんは、現在、ミズナラをはじめとする道産材を用いたウイスキー樽の研究に携わっておられます。ミズナラ材の樽で熟成されたウイスキーは、繊細で複雑な香りや味わいを醸し出すといわれています。今回の講座では、木材の成分や性質などを研究してきた化学者の視点から、ミズナラ樽の内部で起こっているウイスキーの熟成(機能・作用)について、研究成果をわかりやすくお話しくださいます。
実際に、樽によって生み出される香りは、どのようなものなのか。ミズナラ以外の道産材(カバやサクラなど)も含めて、会場で来場者の皆さんにも香りを感じていただきます。
「大人の木育講座」では、質疑応答時間をたっぷりとって、講師と来場の皆さまとの交流をはかります。どなたでもご参加いただけますので、どうぞお越しください。

ミズナラ原木(厚岸)ウイスキー樽用
〇参加費:500円(学生と木育ファミリー会員は、無料)
○定員:50名 *定員になり次第、申込を締め切ります。
〇申込:参加ご希望の方は、下記メールアドレスよりお申し込みください。
その際、題名を「3/2講座申込」と標記し、メール文に、1) 氏名 2) 所属(職業)の記入をお願いいたします。 *学生と木育ファミリー会員の方は、その旨を必ずご記入ください。
family@mokuiku.net(木育ファミリー事務局)
〇講師プロフィール:斎藤直人(さいとう なおと)
北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹。
1960年生まれ。企業や関係機関と連携しながら、森林資源を材料とした「ものづくり」と、その品質向上に必要となる「メカニズム解明」に携わる。その研究を基に、製品として実用化させた(トドマツ葉からの精油、流木の堆肥・緑化資材など)。現在、道産材を用いたウイスキー樽の実用化、道産材の建築材利用などの研究を進めている。
受賞歴:1993年、第7回日本木材学会奨励賞「リン酸化によるヒドロエステル化」、2020年、第22回日本木材学会技術賞「コアドライ」など多数。
〇主催:木育ファミリー
テーマ:なぜ、ウイスキー樽の素材にミズナラが使われるのか。
~林産試験場の研究者が、ウイスキー樽の不思議をわかりやすく解説~
〇講師:斎藤直人(北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹)
〇開催日時:2023年3月2日(木)19:00~20:50
〇会場:札幌エルプラザ4階 中研修室
札幌市北区北8条西3丁目(JR札幌駅北口より徒歩3分)
講師の斎藤直人さんは、現在、ミズナラをはじめとする道産材を用いたウイスキー樽の研究に携わっておられます。ミズナラ材の樽で熟成されたウイスキーは、繊細で複雑な香りや味わいを醸し出すといわれています。今回の講座では、木材の成分や性質などを研究してきた化学者の視点から、ミズナラ樽の内部で起こっているウイスキーの熟成(機能・作用)について、研究成果をわかりやすくお話しくださいます。
実際に、樽によって生み出される香りは、どのようなものなのか。ミズナラ以外の道産材(カバやサクラなど)も含めて、会場で来場者の皆さんにも香りを感じていただきます。
「大人の木育講座」では、質疑応答時間をたっぷりとって、講師と来場の皆さまとの交流をはかります。どなたでもご参加いただけますので、どうぞお越しください。

ミズナラ原木(厚岸)ウイスキー樽用
〇参加費:500円(学生と木育ファミリー会員は、無料)
○定員:50名 *定員になり次第、申込を締め切ります。
〇申込:参加ご希望の方は、下記メールアドレスよりお申し込みください。
その際、題名を「3/2講座申込」と標記し、メール文に、1) 氏名 2) 所属(職業)の記入をお願いいたします。 *学生と木育ファミリー会員の方は、その旨を必ずご記入ください。
family@mokuiku.net(木育ファミリー事務局)
〇講師プロフィール:斎藤直人(さいとう なおと)
北海道立総合研究機構 林産試験場 専門研究主幹。
1960年生まれ。企業や関係機関と連携しながら、森林資源を材料とした「ものづくり」と、その品質向上に必要となる「メカニズム解明」に携わる。その研究を基に、製品として実用化させた(トドマツ葉からの精油、流木の堆肥・緑化資材など)。現在、道産材を用いたウイスキー樽の実用化、道産材の建築材利用などの研究を進めている。
受賞歴:1993年、第7回日本木材学会奨励賞「リン酸化によるヒドロエステル化」、2020年、第22回日本木材学会技術賞「コアドライ」など多数。
〇主催:木育ファミリー
木育の種、咲かせた花~プロローグ - 2023.01.15 Sun
木育は、平成16年度に行われた、北海道と民間との協働プロジェクトの中で生まれた言葉だ。当時、食育という言葉が認定されてきたところで、林業振興と教育の観点から、木育という言葉とともに、新しい取組を始めようとしていた。プロジェクト会議の第1回目、初めましてのメンバーが一堂に会し、最初に事務局から説明されたのは、このような趣旨だったと記憶している。
「木育は新しい言葉です。木育が行政だけの取組にならないように、概念も取組も、ここにいる皆さんで、一から作り上げ、成長させていってください。木育という言葉に、皆さんで魂を込めてください。」
このプロジェクトの議論から、今の木育につながる色々な意見が出た。
「木や森を身近に感じられなくなっている子どもたちに、もっと木に触れてもらいたい」
「でも、子ども向けの取組だけで終わらせず、大人も巻き込める全世代を対象とした取組にしていこう!」(子どもをはじめとするすべての人に)
「すでに各地で展開されている多様な活動を、木育の名前のもとに集ってもらい、膨らませていこう」(あれも木育、これも木育)
「受容から能動へ、個から人と人、社会とのつながりへ発展させていこう」(木とふれあい、木に学び、木と生きる)
こんなイメージが共有され、言葉や概念が培われていった。

当時のメンバーは、木育という新しい種から、どんな花が咲いたらいいだろう、どんな実をつけてくれたら面白いだろうという感覚で、様々なアイデアをぶつけ合っていた。
その中には、夢物語として埋もれていったアイデアもたくさんあるけれど、木育が生まれてもうすぐ20年が経とうとする今、アイデアが時間を経て実現したものもある。
このエッセイでは、時間、きっかけ、人とのつながりによって、叶えられた夢、結実した思いをテーマにしていきたいと思う。そして、思いが形になる実体験が、これからの木育の取組への希望になることを願っている。
「木育は新しい言葉です。木育が行政だけの取組にならないように、概念も取組も、ここにいる皆さんで、一から作り上げ、成長させていってください。木育という言葉に、皆さんで魂を込めてください。」
このプロジェクトの議論から、今の木育につながる色々な意見が出た。
「木や森を身近に感じられなくなっている子どもたちに、もっと木に触れてもらいたい」
「でも、子ども向けの取組だけで終わらせず、大人も巻き込める全世代を対象とした取組にしていこう!」(子どもをはじめとするすべての人に)
「すでに各地で展開されている多様な活動を、木育の名前のもとに集ってもらい、膨らませていこう」(あれも木育、これも木育)
「受容から能動へ、個から人と人、社会とのつながりへ発展させていこう」(木とふれあい、木に学び、木と生きる)
こんなイメージが共有され、言葉や概念が培われていった。

当時のメンバーは、木育という新しい種から、どんな花が咲いたらいいだろう、どんな実をつけてくれたら面白いだろうという感覚で、様々なアイデアをぶつけ合っていた。
その中には、夢物語として埋もれていったアイデアもたくさんあるけれど、木育が生まれてもうすぐ20年が経とうとする今、アイデアが時間を経て実現したものもある。
このエッセイでは、時間、きっかけ、人とのつながりによって、叶えられた夢、結実した思いをテーマにしていきたいと思う。そして、思いが形になる実体験が、これからの木育の取組への希望になることを願っている。